日々の鯛が育まれるところ

鯛の養殖場へは

迫間浦の港から船をだします。


穏やかな入江、静かな朝、日々のはじまり。

「大宝丸」

主人の父から受け継いだ大事な船です。

ここらで主人は

「お〜い!大宝!」と呼ばれています。

息子は大宝の息子、

私は大宝の嫁

と呼ばれています。

五ヶ所湾の入江を縫うよに走ること15分で

鯛養殖のイカダが見えてきます。

筏の大きさは10m✖️10m

網の深さは8m。


毎朝の仕事は、鯛への餌やりから。

筏と筏の間に渡した狭い板を

主人は重たい餌をかついで

サッサ軽やかに渡っていきますが

私は手ぶらでもオドオド。


この時だけは、主人が

サーカスの綱渡りダンサーのように見えます。

主人と息子が手塩にかけて、

大事に大事に

育てている鯛。


お客さんに呼ばれる直前まで

澄んだ海で勢いよく泳いでいます。

食堂でお客さんに美味しく食べて頂くために

大急ぎで調理場まで運んできて

丁寧な下処理を手早く施します。

まな板の上の鯛。

あとは、もう、美味しく食べて頂くのみ。

料理人は私と息子と助っ人の妹。


昨日あったこと、

美味しかったもらいもののこと、

旬のレシピやこれからのことを

いつものように何気なく話しつつ

食べて頂く方の顔を

思い浮かべながら

丁寧に仕込みを行います。



ドキドキ。


喜んでいただけますようにと

願いながら、お客様の元へ。



「美味しい」の声が聞こえると

私たちはようやく、

ほっと胸を撫で下ろすことができます。




「ありがとう。ご馳走様」

「わざわざ来たかいがあった。」

「又、来ます」


かけて頂く言葉に、いつも救われる日々です。


今日の反省と明日の楽しみを

ぼんやり抱いて

時々、海へ歩きにでると

思わぬ夕陽に出会えることも。



明日もおいしい笑顔がみれる予感に

嬉しくなったりしています。

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